住む家を変えればすべては変わる。
引っ越して初日、段ボールにまみれて目覚めた。
引っ越しといっても、住んでいる場所は以前とほとんど変わらない。
見慣れたいつもとおんなじ通勤路を通る。
何か新鮮な感覚を覚える。
同じ道であって同じ道でない。
自分の感覚、とらえ方が変わったんだと理性ではわかっているが、何かその通っている道そのものが変わってしまったような、
新しいまったく別な世界に投げ込まれてしまったような。パラレルワールド。
何が違うと問われれば、具体的になにとは答えることができないが確かに違う。
そんな不思議な感覚も翌日にはなくなってしまう。
そして、それが当たり前だったように日常に溶け込んでいく。
人は慣れる。適応する。
この家は妻と二人で考えて、必死で大工さんに伝えて出来上がったと思っている。しかし本当にそうか。
僕が考えた部分なんてあるのか。
改めて、部屋を見回すとほとんど妻のセンスで出来上がっているような気がする。
僕のセンスなんてものは所詮ニセモノ。もの単体でしか考えていない。
本当に考慮すべきは全体の調和であって、単体ではない。
その意味で、すごくセンスのいい家になったなぁと客観的に見て思う。
こんなに段ボールまみれでも落ち着くのだ。
むしろ、だからこそおちつくのか。
何はともあれ、僕なりには考えてあこがれて、苦労して、家を一緒に作ったという感触がある。
家に使われている部材ひとつひとつが二人の思い出につながっている。
部材をショールームに見に出向き、吟味して採用する。
その過程を思い出す。
大工さん、職人さんの顔を思い出す。